意味論的社会学的ソキウス・ディレクティオーネ

L ( 転轍 \lor \lnot 転轍 ) \supset M( 良き倫理 )

新・様相論理への招待

2018/02/11 - 初回更新

2018/02/13 - 第1章更新

 

tayun3mikonurse.hatenablog.com

 

 春休み(2月/3月)を通して、上掲ブログのユーレイくん発案のもと「A New Introduction To Modal Logic(新・様相論理への招待)」の読書会に参加することにしました(毎週金曜日KUでやるので参加したい人はユーレイくんに言えばよいかも)ので、それの為に気まぐれに翻訳したものや重要な部分をここにこっそり掲載することにしました。

 

この本の私家訳pdfです(1章まで完成)

新・様相論理への招待.pdf - Google ドライブ

 

 以下がこの本の序文です。他の部分も翻訳するなどしたら、この記事に随時追加できればよいなと思っております(主にpdfになると思いますが)。

 

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序文

 様相論理 Modal logicは、必然性 necessity可能性 possibility、つまり「必ず~である」と「~は可能である」の論理である。よってこれは、実際に成り立つものかそうでないか、という真実 truth虚偽 falsityのみだけを考えるのではなく、事物らの間に差異がありうるかについても考える。我々が実際の世界である事物がどのようなものかを考える時、私たちは他の世界で、その事物の代わりとして何があるか、その事物がどのような状態でありえるか、どのような状況であるか――あるいは可能であるか、ということについても考えるだろう。論理学 logicは真実か虚偽かについて主に取り組む。様相論理では、我々は実際の世界のようにありうる世界での真実あるいは虚偽について取り組む。この意味で、ある命題が、その世界とそれに連関してありうる全ての世界で真実である場合、それは必然 necessaryとなり、その世界とそれに連関してありうる全ての世界のどれか一つ以上で真の場合、それは可能 possibleとなる。これがこの本の最初の章で述べられることの全てである。

 この本の狙いは、読者に様相論理を紹介することであって、我々は様相論理について何も知らない読者を想定して書いている。我々は、今までに何の論理学を学んでいない人物にさえ対応できるような内容にこの本を書くことを試みたつもりだ。しかしながら、我々は多くの読者が既に少しは命題論理や述語論理などの様相論理ではない論理学について知っていることを想定しており、それは様相論理を理解するための基礎知識として活用できるだろう。

 この本は我々の先の二つの著書であるAn Introduction to Modal Logic(Hughes and Cresswell, 1968, 以下IML)とA Companion to Modal Logic (Hughes and Cresswell, 1984, 以下CML)の新たな代用となることを意図している。あらかじめ、それら二つの本とこの本の関連性についてここで述べておこう。第1部はIMLで述べた範囲のほとんどに、二つの重要な変更を付け加えたものになっている。一つ目の変更点は、CMLでもそうだったように、システムTよりもシステムKを基本的に用いている。二つ目の変更点は、これもCMLでもそうだったように、我々は(第6章で)完全性を証明するために正準モデル canonical modelの方法を使用している。様相連言標準形 modal conjunctive normal formsの方法はS5の完全性を証明するのに(第5章に)残されており、公式らを証明するためにIMLで使った意味論ダイアグラム sematic diagramsの方法も(第4章に)残しているが、この方法による完全性の証明は省くことにした。

 第2部は、CMLでも扱った、様相命題論理のトピックを論じている。今のところ我々は、導入としての役割を果たすため、これらを特別繊細に論じている。だから例えば、我々の有限モデル finite modelsへのアプローチは、CMLでのフィルター filtrationsによるより標準的な方法より、追うのが簡単だと信じている。この本のこの部分は専門家たちにとってより興味的であるだろうにも関わらず、我々はこのトピックを提示するのに、第1章を読んできた読者がより簡単に議論を追うことが出来る方法を使用するよう試みている。IMLの第3部は1968年当時の様相論理の概観を含んでいた。現在ではもはや、そのような概観は不可能だが、我々は第11章で一応、様相論理の今までの歴史におけるより重要な発展のアウトラインを示すことを試みている。そのため、より詳細を知りたい読者はIMLを参照してほしい。

 第3部は、もっとも執筆が困難であった。様相述語論理 Modal predicate logicは、様相論理のなかで最も哲学的に重要な部分であると考えられており、この本は形式論理 formal logicの本であり、哲学的論理の本ではないが、我々は、ある世界で存在するが他の世界ではそうではない事物や、同一 identicalであると断言できるが必然ではない事物に関しての重要な哲学的な問いに耐えうる程度にこのトピックを議論したつもりだ。不幸にも、様相述語論理の意味論はいっとう複雑であり、我々は出来る限りアプローチしやすく議論を構成したが、読者にとっては重荷を与えることになってしまった。とにもかくにも我々は、読者が辛抱さえあれば、この本以外の知識を必要とせずに全ての証明を追うことができるような技術的素材を本書に配置したつもりだ。

 George Hughesは1994年4月4日に死去した。我々が最初の5章を書き終えた時のことであった。第6章と第2部のほとんどはCMLに準拠しているが、この部分に関して我々は既に多くの議論を交わしていた。私は苦心して原稿を作り上げ、私の能力のすべてを持って、Georgeが生きてその完成を見るに値するような形式に近づけるように努力した。第3部では彼の協力の欠落を私は大きく実感することになり、ここWellingtonにいたRob GoldblattとEdwin Maresに多くの部分を校正、コメントをありがたく頂戴する形になった。ここで様々な読者や、「ウィッシュリスト」を送ってくれた世界中の同僚たち――私たちは必ずしもその全てを採用できなかったが――に改めて感謝したい。

 我々の部署の秘書であるDebbie Luyindaにも、この我々の原稿を最初にコンピュータへ入力するという退屈な仕事を遂行してくれたことについて、感謝を申し上げる。

 

A New Introduction to Modal Logic

A New Introduction to Modal Logic